支援経過記録は「日記」ではない — 監査で指摘されない第5表の書き方
対象読者: 支援経過記録(第5表)に何をどこまで書くべきか迷っているケアマネジャー、記録指導に悩む管理者 この記事で分かること: 監査・運営指導で見られるポイント、「事実・判断・次の一手」の3点セットで書く方法、書きすぎ/書かなすぎの線引き 読了目安: 7分
支援経過記録が「日記」になってしまう理由
第5表(居宅介護支援経過)は、ケアマネジャーの書類の中でいちばん自由度が高い。様式は厚生労働省の通知「介護サービス計画書の様式及び課題分析標準項目の提示について」(平成11年11月12日 老企第29号)で示されているが、中身は日付と本文の羅列だ。フォーマットが縛ってくれないから、書き手の癖がそのまま出る。
よく見かけるのは2つの極端だ。
日記型: 「利用者宅を訪問。お変わりなく過ごされている。」——毎月ほぼ同じ文面が並ぶ。読み返しても、何を確認してどう判断したのかが分からない。
逐語型: 電話のやりとりを全部書く。1件の記録が長すぎて、あとから経緯を追うときにどれが重要な記録か拾えない。
どちらも共通する問題は、「何のための記録か」が決まっていないまま書いていることだ。
監査・運営指導では何を見られるのか
支援経過記録が根拠として機能するかどうかは、運営基準との対応で決まる。居宅介護支援の運営基準(指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準・平成11年厚生省令第38号)は、ケアマネジャーに次のことを求めている。
- モニタリング: 少なくとも月1回利用者の居宅を訪問して面接し、少なくとも月1回その結果を記録すること(第13条)
- 記録の整備: 支援の実施状況等の記録を整備し、保存すること(第29条。保存年限は自治体条例で5年としている例も多いため、所在地の条例を確認)
つまり運営指導で確認されるのは、美しい文章ではなく次の点だ。
- 月1回の訪問・面接とモニタリング記録が毎月残っているか(空白月がないか)
- サービス変更・区分変更・入退院など動きがあった場面で、経緯と判断が記録されているか
- 記録の日付と実際の動きが整合しているか(あとからまとめ書きした形跡がないか)
- 誰から得た情報か(本人/家族/サービス事業所/主治医)が分かるか
「お変わりなし」の日記型が危ういのは、この観点で見ると訪問した事実しか証明できず、専門職として何を確認したのかが残らないからだ。
「事実・判断・次の一手」の3点セットで書く
私が勧める型はシンプルで、1件の記録に次の3つを入れる。
① 事実: 誰から・何を確認したか。「本人より、夜間のトイレで2回ふらつきがあったと聞き取り」「デイ相談員より、午睡時間が延びていると電話連絡」——情報源とセットで書くのがポイント。
② 判断: その事実をどう評価したか。「転倒リスクの高まりと判断」「短期目標の達成状況に影響なしと判断」——ここが専門職の記録と日記の分かれ目。判断を書くから、あとで結果が違っても「その時点の情報では妥当だった」ことを示せる。
③ 次の一手: 判断を受けて何をするか。「次回訪問時に夜間動線を確認」「福祉用具事業者へ手すり設置の検討を依頼」——何もしない判断なら「経過観察とする」と書く。
この3点があると、記録は「点」ではなく「線」になる。前回の「次の一手」が今回の「事実」につながり、支援の一貫性がそのまま紙面に現れる。運営指導で経緯を問われても、記録を順に読むだけで説明が終わる。
書きすぎ・書かなすぎの線引き
3点セットを踏まえると、線引きはこう整理できる。
書くべきもの: モニタリング(毎月)、状態変化とそれへの対応、サービスの追加・変更・中止の経緯、担当者会議に至る調整、家族・医療機関・事業所とのやりとりのうち判断に影響したもの、苦情・事故に関する対応。
簡潔でよいもの: 変化のない定期連絡、日程調整だけの電話。1〜2行で「事実+変化なし」を残せば足りる。
書いてはいけないもの: 根拠のない推測を断定調で書くこと(「家族が介護放棄している」等)、本人の尊厳を損なう表現。記録は開示請求の対象になり得る文書だと意識する。
なお、モニタリング記録を支援経過(第5表)に書くか、別葉のモニタリング様式に書くかは事業所の運用によるが、どちらに何を書くかのルールを事業所内で統一しておくことが監査対応上は重要だ。散在していると「記録がない」と誤認されるリスクがある。
記録の負担は「型」と「入力の仕組み」で下げる
3点セットで書くと1件あたりの質は上がるが、件数の多さは変わらない。移動中に記憶が薄れ、夕方まとめて書く——この運用が続く限り、記録は残業の温床のままだ。
私たちがCareSpace OSを設計したとき、支援経過記録は「訪問直後に、音声で、その場で」残せる動線にこだわった。車内で音声メモを吹き込めば、AIが事実・判断・次の一手の構造に整理した下書きを作り、ケアマネジャーは確認して確定するだけ——記録の質を落とさずに、書く時間そのものを削る設計だ(仕組みの詳細は音声メモから記録が生成されるOSの記事に書いた)。
型を持つこと。そして型に流し込む作業を道具に任せること。この2つが揃うと、支援経過記録は「監査のための義務」から「自分の判断を守ってくれる資産」に変わる。
CareSpace OSについて詳しく見る → https://carespace.jp/product
出典・参考
- 厚生労働省「介護サービス計画書の様式及び課題分析標準項目の提示について」(平成11年11月12日 老企第29号、最終改正を含む)
- 「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準」(平成11年厚生省令第38号)第13条・第29条
