ケアマネが訪問直後の車内で記録を終える — 音声メモから第5表が生成されるOSの話
対象読者: 居宅介護支援事業所の経営者、ケアマネジャー、介護現場の管理者 この記事で分かること: なぜケアマネが「訪問→事務所で残業」のサイクルから抜けられないのか、その動線をどうOSで変えたか 読了目安: 6分
なぜケアマネは訪問の後に残業するのか
ケアマネジャーの月の労働時間のうち、「書類作成」が占める割合は決して小さくない。事業所によって違うが、4割前後を書類が占めるケースもあると現場からよく聞く。
なかでも重い書類が、支援経過記録(ケアプラン第5表)だ。
利用者宅を訪問する。30分から1時間、家族と本人の話を聞く。帰路の車の中で、頭の中には情報があふれている。「ご家族の介護負担が増えている気がした」「本人の食欲が先月より落ちている」「主治医との連携が必要」「次のサービス担当者会議で話すべき論点が3つある」。
ところがこの情報を、ケアマネは事務所に戻ってから、PCに向かって思い出しながら書く。多くの場合、訪問から数時間後、あるいは翌日になることもある。
人間の記憶は、訪問直後がピークで、時間とともに急速に劣化する。だから多くのケアマネは「忘れないうちに」と、訪問と訪問のあいだの細切れ時間を使って手書きメモを取る。そのメモを事務所でPCに転記する。転記しながら、訪問時の文脈を呼び戻す。これが残業の正体だ。
「記録を書く時間を、もっと削りたい」。これは介護経営のあらゆる現場で繰り返し聞く声だ。
CareSpace OSが提供する動線
私たちが運営する居宅介護支援事業所「かいごの窓口」では、CareSpace OSの音声メモ機能を業務動線に組み込んでいる。
仕組みは単純だ。
- ケアマネが訪問を終え、車に戻る
- スマートフォンのアプリで「録音開始」を押す
- 訪問の所感、観察事項、家族からの相談内容を、思いついた順に話す(5〜10分)
- 「録音停止」を押す
- 音声は自動で文字起こしされ、利用者の記録に紐づく形でDBに保存される
- 月末、支援経過記録(第5表)を作成するモーダルを開くと、その月に蓄積された音声メモが自動で取り込まれ、AIが第5表のフォーマットに整える
ケアマネが事務所に戻ってPCに向かって思い出しながら書く時間が、この動線では発生しない。記録は訪問直後の車内で完了する。
技術的には、音声録音はOSのvoice_recordingsテーブルに保存される。各レコードはclient_id(誰の記録か)、record_type(音声メモというタイプ)、recorded_at(いつ録音されたか)、organization_id(マルチテナントの境界)を持つ。月末に第5表生成APIが走るとき、このvoice_recordingsを含む複数のデータソース(記録、サービス利用票、アセスメント等)からAIが必要な情報を引き、第5表のフォーマットに変換する。
ケアマネは「録音する」「月末にAI生成→修正→確定する」だけでよい。中間にある「思い出す」「整理する」「フォーマットに合わせる」という作業がOSに吸い込まれる。
なぜそう設計したか — 「記録を取らせる」のではなく「動線に沿わせる」
設計判断の根拠は、私自身が介護現場に10年以上いた経験から来ている。
既存の多くの介護システムは、「記録を取らせる」発想で作られている。立派なフォームがあり、入力項目がきれいに分類されている。しかし、訪問直後の車の中で、片手にスマホを持ったケアマネが、そのフォームを開いて入力するか?答えはノーだ。フォームは事務所のPCで使うものとして設計されている。
私たちはこの順番を逆にした。「現場の動線に、OSのほうが合わせる」。
訪問直後の車の中でできることは、せいぜい音声を吹き込むだけだ。ならば、入り口は音声録音ボタン1つでいい。文字起こしも、フォーマット整形も、第5表へのマッピングも、すべてOS側で吸収する。ケアマネに要求するのは「話すこと」だけ。
この設計判断は、CareSpace OSの開発履歴では「自由記録方式」と呼んでいる。記録時にサービス種別やフォーマットを意識させず、後段の書類生成AIがDBカラムから組み立てる。記録の入り口を狭くして、出口を広くする発想だ。
別の言い方をすれば、私たちはケアマネに「正しいフォーマットで入力する」という負荷を負わせない。代わりに、OSが「正しいフォーマットに変換する」負荷を負う。これは介護の現場感を持っていないと、出てこない設計になる。
介護事業者へのメッセージ
この機能は、すべての事業所に合うわけではない。たとえば、訪問件数が極端に少なく、ケアマネ全員が事務所のPC前で記録を完結できている事業所には、効果は限定的だろう。
逆に、こういう事業所には強く効く。
- 訪問件数が多く、ケアマネの残業が常態化している
- 記録の時間を削って、利用者と話す時間に投資したい
- 紙の記録から脱却したいが、既存システムは現場で使われていない
CareSpace OSは現在、私たち自身が運営する居宅介護支援事業所「かいごの窓口」で毎日使われている。1号店で磨いて、運用で証明してから外販する。Buy First, Build Laterの方針だ。
導入を検討する事業者には、まず1名のケアマネで2週間の試用をおすすめしている。記録時間がどれだけ削れるか、ケアマネ自身が体感する。それが導入判断の最も正直な指標になる。
▼ CareSpace OSの試用相談はこちら → app.carespace.jp ▼ 1号店「かいごの窓口」の運用記録はXで発信中
