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売上が足りないとき、集客より先に見る3つの取りこぼし

介護事業所の経営改善を、集客だけで考えていませんか。稼働・加算・記録時間の3つから、取りこぼしと着手順を見つける考え方を解説します。

売上が足りないとき、集客より先に見る3つの取りこぼし

介護事業所の売上が伸びないとき、最初に「新しい利用者を増やそう」と考えがちである。しかし、集客を増やす前に確認したい数字がある。

いまの定員や職員体制のままでも、すでに取りこぼしている売上や時間がないか。見る場所は、稼働、加算、記録時間の3つである。

この3つを自事業所の数字で確認できるよう、介護経営 かんたん診断を作った。サービス種別を選ぶだけでも、取りこぼしが起きやすい場所を確認できる。数字を追加すれば、年間の金額まで概算できる。

経営診断は、事業所を採点するためのものではない

経営診断という言葉から、点数を付けられたり、他事業所と順位を比べられたりする場面を想像する人もいるかもしれない。

今回の診断の目的は、良い事業所か悪い事業所かを判定することではない。次にどこを見るべきか、判断材料を渡すことである。

同じ「売上が足りない」という状態でも、原因は一つではない。

  • 利用枠に空きがある
  • 算定できる可能性のある加算を確認できていない
  • 記録や転記に時間がかかり、サービス提供や管理に使える時間が減っている

この3つは、対策がまったく異なる。稼働の問題に対して記録ソフトだけを入れても、利用者は増えない。加算の要件が整っていない状態で広告を増やしても、取れるはずの単価は上がらない。記録の二重入力が残ったまま稼働を上げれば、現場の負担が先に限界へ近づく。

だから、道具や施策を選ぶ前に、どこで取りこぼしているかを分けて見る必要がある。

1. 稼働の取りこぼし

最初に見るのは、いま持っている提供能力がどれだけ埋まっているかである。

ただし、介護事業の稼働率は、すべて同じ式では計算できない。

通所介護は「席」の埋まり方を見る。延べ利用者数を、1日の利用定員と営業日数で割る。施設・居住系は「床」の埋まり方を見るため、営業日ではなく暦日を使う。訪問系は定員ではなく、職員の拘束時間のうち、どれだけをサービス提供に充てられたかを見る。小規模多機能や看護小規模多機能は、登録定員に対する登録者数を見る。

通所と訪問を同じ式で診断すると、経営判断を誤る。今回の診断では、対応するサービスを「席」「床」「時間」「登録」の4つの型に分け、それぞれに合う計算を行う。

稼働に余地が見つかったときも、すぐに広告費を増やすとは限らない。曜日ごとの空き、紹介元ごとの利用開始数、キャンセル後の振替状況まで分けると、先に直す場所が見える。たとえば特定曜日だけ空いているなら、事業所全体の認知よりも、空き枠の伝え方や受け入れ条件の整理が先かもしれない。

2. 加算の取りこぼし

次に見るのは、算定状況である。

加算は、届出を出せば終わるものばかりではない。会議、研修、評価、計画、情報提出など、継続して記録を残すことが要件になるものがある。そのため、算定できていない理由は、制度を知らないことだけではない。必要な運用は行っていても、証拠となる記録が揃わず、算定へつながっていない場合がある。

ここで大切なのは、未算定の加算をすべて「取るべき売上」と考えないことである。人員や体制の要件が合わないもの、同時に算定できない区分、整備にかかる負担のほうが大きいものもある。

診断で出る金額は、あくまで検討の入口となる概算である。候補が見つかったら、次の順番で確認する。

  1. 自事業所が対象サービスか
  2. 人員・設備・運用の要件を満たせるか
  3. 必要な記録が日常業務の中で残せるか
  4. 整備コストに対して、算定効果が見合うか

加算は、単位数の大きさだけで選ぶものではない。現場の運用に無理なく組み込めるかまで見て、初めて経営改善になる。

3. 記録時間の取りこぼし

3つ目は、記録や書類に使っている時間である。

これは請求額には直接表示されない。しかし、介護事業では人の時間が大きな経営資源である。同じ内容を紙、表計算、介護ソフトへ何度も転記する。管理者が記録の不足を探し、職員へ確認する。月末に帳票を揃えるため、残業が発生する。こうした時間は、少しずつ利益と現場の余裕を削る。

見るべきなのは「記録時間をゼロにできるか」ではない。ケアに必要な記録は残さなければならない。減らす対象は、同じ情報の再入力、探す時間、確認の往復である。

まず1週間だけ、職員1人あたりの記録・書類時間を測る。人数、営業日数、時給を掛ければ、年間でどれくらいの時間と人件費を使っているかを概算できる。

数字が大きかった場合も、すぐに人を減らす話にしない。空いた時間を利用者対応へ戻すのか、訪問件数を増やすのか、管理者の残業を減らすのか。目的を先に決める必要がある。特に訪問系では、記録時間の削減を増収と人件費削減の両方へ重ねて計上してはいけない。同じ時間から得られる効果は、一度だけ数える。

3つを並べると、着手の順番が変わる

稼働、加算、記録時間を別々に見ると、打ち手の順番を決めやすくなる。

たとえば、稼働に大きな空きがあり、記録時間も長い事業所なら、職員へ「もっと利用者を受け入れよう」と伝えるだけでは続かない。先に記録や予定調整の重複を減らし、受け入れても現場が崩れない状態を作る。そのうえで、空いている曜日や時間帯を紹介元へ具体的に伝える。

反対に、稼働が高く、記録時間も大きくない事業所なら、利用者数をさらに増やすより、算定状況やサービス単価を点検するほうが先かもしれない。

診断の価値は、大きな金額を出すことではない。「いま何をしないか」まで決められることである。

まず、自事業所の数字を出してみる

経営改善は、道具選びから始めると迷いやすい。広告、採用、介護ソフト、AI。選択肢は多いが、自事業所の取りこぼしがどこにあるか分からなければ、必要なものも決められない。

介護経営 かんたん診断では、通所、訪問、施設・居住、多機能など24サービスに対応している。登録は不要で、入力した数字はブラウザ内で計算される。相談ボタンを押さない限り、入力内容は送信されない。

結果は概算であり、加算の算定可否は各事業所の体制や地域区分によって変わる。それでも、稼働、加算、記録時間を同じ画面に並べると、次に確認すべき場所は見えやすくなる。

売上が足りないとき、すぐに新しい施策を足す必要はない。まず、すでに持っている席、床、時間、記録の中に、取りこぼしがないかを見る。経営診断は、その順番を決めるために使うものである。

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