ケアプラン第2表に「正解の文例」はない — 文例集を卒業する「組み立て」の考え方
ケアプランの第2表を書くたびに文例集を開いているケアマネジャー、そして事業所の管理者に向けた記事である。 「文例を探す時間」が長いわりに、監査や担当者会議で第2表の中身を指摘される——その原因は文章力ではなく、第2表の構造の捉え方にある。 この記事では、文例集がなぜ限界を迎えるのか、そして文例に頼らず第2表を「組み立てる」ための考え方を整理する。
第1章: なぜ文例集を引いても第2表は良くならないのか
第2表(居宅サービス計画書(2))の様式は、厚生労働省の通知「介護サービス計画書の様式及び課題分析標準項目の提示について」(平成11年11月12日 老企第29号)で示されている。列の並びを思い出してほしい。
生活全般の解決すべき課題(ニーズ)→ 長期目標 → 短期目標 → サービス内容 → サービス種別 → 頻度 → 期間
この並びが意味するのは、第2表が「文章を書く欄の集まり」ではなく、左から右へ因果でつながった1本の鎖だということだ。ニーズがあるから目標があり、目標があるからサービスがある。
文例集はこの鎖の「輪」を1個ずつ売っている。「歩行が不安定」というニーズの文例、「転倒なく移動できる」という目標の文例。1個1個は日本語として正しい。だが文例をつなぎ合わせた第2表は、輪はきれいなのに鎖としてつながっていないことが多い。
実際、運営指導(実地指導)で第2表について指摘される定番は、文章の巧拙ではない。
- ニーズとアセスメントの内容がつながっていない(アセスメントに根拠がない課題が突然登場する)
- 長期目標・短期目標が抽象的で、達成したかどうか評価できない
- 短期目標の期間が切れたままサービスが継続している
- サービス内容が目標とつながっていない(目標は「入浴の自立」なのにサービス内容が汎用文)
すべて「つながり」の指摘である。文例集を何冊買っても、この指摘は消えない。道具が解く問題と、実際に起きている問題がズレているからだ。
第2章: 「組み立て」の考え方 — 4つの接続を確認する
文例の代わりに提案したいのが、第2表を4つの「接続」で組み立てる考え方だ。書く前に、この4つの矢印が通っているかだけを確認する。
接続1: アセスメント → ニーズ
ニーズは第2表で発明しない。アセスメント(課題分析標準項目、令和3年改正で23項目)で拾った事実から選ぶものだ。課題整理総括表を使っている事業所なら、総括表の「見通し」欄からニーズへ転記する、という一方通行を徹底するだけで「根拠のない課題」は消える。
書き方のコツはひとつだけ。ニーズの文に、その人固有の事実を1つ入れる。「転倒せず安全に生活したい」ではなく「玄関の上がり框でふらつくことが増えたが、これからも自宅で生活を続けたい」。固有の事実が入っていれば、アセスメントとの接続は自動的に証明される。文例集の文をそのまま使えないのは、この固有性が入らないからだ。
接続2: ニーズ → 長期目標
長期目標は「ニーズが解決された状態」を書く。ここでやりがちなのが、サービスの利用自体を目標にしてしまうことだ。「デイサービスに通う」は目標ではなく手段である。「デイサービスに通う」の先にある「入浴を週2回、安全に続けられている」が目標になる。
判定基準はシンプルで、「その文は、サービスが全部止まっても意味が通るか」。通るなら状態を書けている。通らないなら手段を書いている。
接続3: 長期目標 → 短期目標
短期目標は長期目標の「途中経過の検問所」だ。長期目標を達成したかどうかは半年〜1年待たないと分からないが、短期目標は3か月程度で「進んでいるか」を判定できる粒度にする。だからこそ評価できる表現——「〜ができる」「〜が週◯回続いている」——が必要になる。「安心して生活できる」のような評価不能な短期目標は、モニタリングの根拠を自分で捨てているのと同じである。
期間は認定有効期間の範囲内で設定する(老企第29号の記載要領)。短期目標の期間切れは運営指導の頻出指摘なので、更新・変更のたびに機械的に確認する仕組みにしておきたい。
接続4: 短期目標 → サービス内容
サービス内容は「そのサービスの一般的な説明」ではなく、「この短期目標を達成するために、その事業所に何をしてほしいか」を書く。「入浴介助」ではなく「浴槽への出入り動作を見守り、できない部分のみ介助する(残存機能の活用)」。ここが具体的だと、サービス担当者会議で各事業所への依頼がそのまま伝わり、第4表・個別サービス計画への落とし込みもぶれない。
この4つの接続が通っていれば、文章表現が多少ぎこちなくても第2表として機能する。逆に、どれか1本でも切れていれば、どんなに美文でも監査では守ってくれない。
第3章: なぜ「AIに文例を出させる」でも同じことが起きるのか
生成AIの普及で、「第2表の文例をAIに出してもらう」という使い方が広がっている。だが、汎用のチャットAIに「歩行不安定な80代女性の第2表の文例を」と頼むのは、文例集が無限に厚くなっただけで、第1章の問題は1ミリも解決していない。出てくる文はその人のアセスメントとつながっていないからだ。
私たちがCareSpace OSでケアプランのAI生成を設計したとき、この点だけは最初から決めていた。AIに文例を出させるのではなく、その利用者のアセスメント情報からニーズ→目標→サービス内容の鎖を丸ごと組み立てさせ、最終判断をケアマネジャーに残す。つまりAIが担うのは「接続1〜4を通した原案づくり」であり、固有の事実の重み付けと採否の判断は人間の仕事として設計している(この設計の詳細はケアプランAI生成の記事に書いた)。
これは介護現場を10年以上運営し、居宅介護支援事業所「かいごの窓口」南店の実運用の中でシステムを鍛えてきた立場からの結論でもある。ケアマネジャーの専門性は「文章を書くこと」ではなく「その人の生活課題を見立て、鎖を設計すること」にある。道具が奪っていいのは前者だけだ。
第4章: 文例集を「卒業」する、ただし捨てない
誤解のないように書いておくと、文例集そのものを否定するつもりはない。経験の浅いケアマネジャーが目標表現の語彙を増やす教材としては有効だし、「評価できる短期目標の言い回し」のストックとして手元に置く価値はある。
卒業すべきなのは、文例から書き始める順番だ。アセスメントの固有の事実から始めて4つの接続を通し、表現に詰まったときだけ文例を参照する。順番が変わるだけで、第2表は「監査対策の書類」から「チーム全員が同じ方向を向くための設計図」に変わる。
そしてこの「組み立て」の反復こそ、システムが最も得意とする領域である。書類仕事を時短したいだけならどんなツールでもいい。だが「アセスメントから一貫した鎖を組み立てる」ことを日常業務の標準にしたい事業所には、そのために設計されたシステムが合うはずだ。
CareSpace OSについて詳しく見る → https://carespace.jp/product
出典・参考
- 厚生労働省「介護サービス計画書の様式及び課題分析標準項目の提示について」(平成11年11月12日 老企第29号、最終改正を含む)
- 厚生労働省「『課題分析標準項目』の改正について」(令和3年3月31日 老認発0331第6号)
