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介護のFAXは「なくす」より「デジタルに橋渡しする」— FAXと共存する現実解

介護からFAXが消えないのは相手を選べない連携構造のせい。脱FAXの号令が失敗する理由と、FAXを残したまま送受信と中身をクラウドで完結させるCareSpace OSの設計を解説する。

介護のFAXは「なくす」より「デジタルに橋渡しする」— FAXと共存する現実解

対象読者: FAXの送受信に毎日時間を取られ、脱FAXを試みたが結局やめられずにいる居宅介護支援事業所・通所・訪問などの管理者・相談員 この記事で分かること: 介護からFAXが消えない構造的な理由、「脱FAX」の号令が失敗するメカニズム、FAXを残したまま中身をデジタルに取り込むCareSpace OSの設計思想 読了目安: 6分


なぜ介護現場からFAXは消えないのか

介護のDXを語るとき、必ず槍玉に挙がるのがFAXだ。提供票のやり取り、サービス担当者会議の照会、医療機関との情報連携、居宅と事業所のあいだの日常的な連絡——そのかなりの部分が、いまだにFAXで流れている。

「時代遅れだ」「早くやめるべきだ」という声はもっともだ。だが、現場でFAXがしぶとく生き残っているのには理由がある。それは、自分の事業所がどれだけデジタル化しても、相手がFAXでしか受け取れないなら、こちらもFAXを送らざるを得ない、という関係性の問題だ。

ケアマネジャーが提供票を10か所の事業所に送るとき、そのうち1か所でもメールやシステムに対応していなければ、結局その1か所のためにFAXの運用を残すことになる。医療機関、行政、古くからの取引先——「相手を選べない」介護の連携において、FAXは最後まで残る通信手段になりやすい。

「脱FAX」の号令が、現場でうまくいかない理由

だからこそ、「うちはFAXをやめます」という一方的な宣言は、現場でほとんど機能しない。

自分だけがデジタルに移行しても、相手が紙のままなら連絡は途切れる。無理にFAXを切れば、対応できない相手との連携が滞り、結局は電話や郵送という別の手間に置き換わるだけだ。脱FAXが「相手にもデジタル化を強いる」形になると、力関係や相手の事情次第で頓挫する。

現実的なゴールは、「FAXをこの世からなくすこと」ではない。「FAXは残っていてもいいが、それを受けて・送って・中身を扱う手間を、自分たちの側で最小化すること」だ。相手の運用を変えなくても、こちら側の負担だけは下げられる。ここに解決の余地がある。

FAXを「受けて・送って・デジタルに取り込む」

CareSpace OSがFAXに置いている設計は、まさにこの発想に立っている。FAXという通信手段そのものは否定せず、そのうえで、送受信と中身の処理をクラウド上で完結させることを狙っている。

  • 受信したFAXは、紙で出力するのではなくクラウド上で受け取る。事業所ごとに受信の口を分けて管理できる。
  • 受け取ったFAX、たとえば提供票のような定型書類は、画像のまま放置せず、内容をデジタルデータとして取り込む方向で扱う。目で見て手入力し直す作業を減らすための転記の仕組みを用意している。
  • 送信もクラウドから行える。提供票のような大量送付では、宛先ごとの送付状を自動で用意し、一括で送る動線にしている。
  • 送受信の履歴や通信の使用状況が記録として残るので、「いつ・どこに・何を送ったか」が後から追える。

紙のFAXを机の上でさばくのではなく、送受信の入口と出口をクラウドに寄せる。これにより、相手が紙のFAXのままでも、自分たちの作業はデジタルで完結する。

なぜ「共存」を選んだのか

CARESPACEはBuy First, Build Laterの方針で、施設を運営してから課題をシステムに反映している。LINE(デイケア)を10年以上、2026年3月からは居宅介護支援事業所「かいごの窓口」も運営してきた。

実際に居宅の実務を回すと、FAXは「なくしたいのに、相手の都合でなくせない」ものだと痛感する。だから私たちは、理想論として脱FAXを掲げるのではなく、「FAXは残る前提で、こちら側の手間だけを削る」ことを選んだ。相手を変えることはできないが、自分たちの動線は変えられる——この線引きが、現場で実際に使われる設計につながると考えている。

FAXを敵視して全廃を目指すと、対応できない相手との連携が犠牲になる。逆に、FAXを受け皿ごとデジタルに取り込めば、紙とデジタルの両方の世界にまたがったまま、負担だけを下げられる。

この記事が向く事業者、向かない事業者

送受信するFAXの量が多く、その仕分けや転記に毎日時間を取られている事業所、あるいは提供票のやり取りが月末に集中してパンクしがちな居宅には、FAXをデジタルに橋渡しする仕組みは効いてくる。

一方、連携先がすでにほぼデジタル対応していて、FAXの利用がごくわずかな事業所には、この仕組みの恩恵は限定的だ。その場合は、残ったわずかなFAXをどう処理するかより、他の業務のデジタル化に力を向けたほうがいい。

脱FAXのゴールは、FAXをゼロにすることではなく、FAXに振り回される時間をゼロに近づけることだ。相手の運用を待たずに、自分たちの手間から先に減らせる。

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