サ責の仕事はなぜ「調整」に溶けるのか — サービス提供責任者の業務を4つに分解する
対象読者: 訪問介護のサービス提供責任者(サ責)、サ責を抱える管理者・経営者 この記事で分かること: サ責の法定業務の整理、時間が「調整」に溶ける構造、業務を4分類して立て直す方法 読了目安: 7分
サ責は訪問介護の要。なのに一番忙しいのはなぜか
サービス提供責任者は、訪問介護の品質を左右する中核職だ。指定居宅サービスの運営基準(指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準・平成11年厚生省令第37号)は、サ責の業務として次を挙げている(第28条)。
- 指定訪問介護の利用申込みに係る調整
- 利用者の状態変化やサービスへの意向の定期的な把握
- サービス担当者会議への出席等による居宅介護支援事業者等との連携
- 訪問介護員等に対する具体的な援助目標・援助内容の指示、利用者情報の伝達
- 訪問介護員等の業務の実施状況の把握
- 訪問介護員等の能力や希望を踏まえた業務管理
- 訪問介護員等への研修、技術指導等
- 訪問介護計画の作成(第24条)
条文を見れば分かるとおり、サ責の本来業務は「計画を作り、ヘルパーを育て、品質を管理する」ことだ。ところが現実のサ責の1日は、欠勤ヘルパーの代替探しの電話、キャンセル対応、シフトの穴埋め、自身のサービス提供(欠員の穴埋めに自分が入る)で埋まっていく。
時間が「調整」に溶ける構造
サ責の業務を観察すると、時間を食っているのは業務そのものではなく、業務と業務のあいだの伝達と突き合わせであることが多い。
- ヘルパーの稼働可能時間・利用者の希望・自分の予定を、それぞれ別の場所(個人のメモ、紙のシフト表、電話)で管理している
- 状態変化の情報が、ヘルパーの口頭報告・サービス実施記録・ケアマネからの電話でバラバラに届き、訪問介護計画に反映されるまで時間差がある
- 月末に予定と実績を突き合わせ、提供票の実績報告を作る作業が締め日に集中する
つまり「調整に溶ける」のは、サ責が調整好きだからではない。情報の置き場が分散していて、サ責本人が人間ハブになるしかない構造だからだ。この構造のまま人を追加しても、ハブが2人になって伝達コストはむしろ増える。
業務を4つに分解する
立て直しの第一歩は、サ責の業務を性質で分けることだ。私は4分類を勧めている。
① 計画系(訪問介護計画の作成・見直し): サ責にしかできない専門業務。アセスメントと居宅ケアプランを起点に、援助目標→具体的な援助内容→手順へ落とす。ここに使う時間は「削る」のではなく「確保する」対象。
② 調整系(シフト、代替手配、日程変更): 最も時間を食うが、実は最もルール化できる。稼働可能時間・資格・相性・移動距離が一覧になっていれば、判断の大半は機械的に決まる。
③ 育成系(同行訪問、技術指導、研修): 品質の源泉。調整に押されて後回しになりやすいが、育成が進むほど②の負荷は下がる(任せられるヘルパーが増える)という関係にある。
④ 記録・実績系(実施状況の把握、実績確定): 毎日発生する定常業務。ヘルパーの実施記録がその日のうちに集まる仕組みがあるかどうかで、月末の負荷がまったく変わる。
分類してみると、優先順位の原則が見えてくる。①と③はサ責の判断が価値を生む業務、②と④は仕組みが肩代わりできる業務だ。サ責が疲弊している事業所ほど、②と④が①と③を圧迫している。
仕組みで②と④を肩代わりする
②調整系と④記録・実績系は、情報の置き場を1つにするだけで大きく変わる。
- 予定(シフト・訪問予定)を1か所で管理し、変更はそこだけ更新する。電話とメモの往復をやめる
- ヘルパーの実施記録は訪問直後にその場で入力し、サ責が同じ画面で確認できるようにする。口頭報告への依存を減らす
- 実績は予定からの差分として自動で確定していく。月末の突き合わせを「作業」から「確認」に変える
CareSpace OSは、この「予定を正本にして、記録と実績がそこに紐づく」構造を介護事業の基盤として設計している。サ責が人間ハブを降りられれば、空いた時間は訪問介護計画と同行指導——本来サ責にしかできない仕事に返ってくる。
サ責の求人がなかなか埋まらない今、「もう1人サ責を採る」より先にやるべきことがある。いまいるサ責の時間を、②と④から取り戻すことだ。
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出典・参考
- 「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」(平成11年厚生省令第37号)第24条・第28条
