「介護ソフトを入れ替えたのに、紙が減らない」
「記録はデジタルになったが、同じ内容を別の書類へ転記している」
「チャットを導入したが、大切な情報を後から探せない」
介護現場の業務改善では、こうしたことが起こります。原因は、導入したシステムが悪いとは限りません。現在の仕事の流れを整理しないまま、今ある作業をそのままデジタルへ移している場合があります。
DXの目的は、紙を画面へ置き換えることではありません。
必要な情報が一度で記録され、必要な人へ届き、次の判断や書類へつながる状態をつくることです。そのためには、新しい機能を選ぶ前に、現在の業務を棚卸しする必要があります。
この記事では、介護事業所が業務を整理し、最初に改善する仕事を決めるための7つの視点を紹介します。
1|職種ではなく「一日の流れ」で書き出す
最初から業務一覧を完璧につくろうとすると、作業が大きくなりすぎます。まずは一つの職種、一つの時間帯から始めます。
例えば、通所介護の朝であれば、次のように時系列で書きます。
- 当日の利用予定と欠席連絡を確認する
- 送迎ルートと担当者を確認する
- 家族からの連絡を申し送る
- 到着後にバイタルを測定する
- 前回からの変化を確認する
- 必要な情報を記録する
- 看護職員や管理者へ共有する
居宅介護支援であれば、電話を受けてから、記録し、関係者へ連絡し、次の予定を設定するまでを一つの流れとして書きます。
「記録業務」「連絡業務」と大きくまとめず、誰が、いつ、何を見て、次に何をするのかまで分けることが重要です。
2|一つの情報が何回使われているかを追う
介護業務では、一度得た情報が複数の場面で使われます。
例えば利用者の体調変化は、日々の記録、申し送り、家族への連絡、主治医やケアマネジャーへの報告、月次報告書などへつながります。
このとき確認したいのは、情報が何回入力されているかです。
- 紙へ書いた後、介護ソフトへ入力している
- チャットで共有した後、支援経過へ転記している
- バイタル表の数字を報告書へ写している
- FAXで届いた書類を保存し、別の台帳にも記録している
同じ情報を何度も入力している場所は、改善効果が出やすい候補です。
入力を一度にし、必要な記録や報告へ連携できれば、転記時間だけでなく、数字や氏名を間違えるリスクも減らせます。
3|「探す」「待つ」「聞く」を記録する
業務一覧には、目に見える作業だけが書かれがちです。しかし、現場の負担になりやすいのは、作業の間にある時間です。
- 必要な書類の保管場所を探す
- 管理者の確認が終わるまで待つ
- 判断基準が分からず、経験者へ聞く
- 電話がつながるまで何度もかけ直す
- 過去の記録を複数の画面から探す
一回数分でも、職員全体で毎日繰り返せば大きな時間になります。
一週間だけでも、「何を探したか」「誰の確認を待ったか」「誰に何を聞いたか」をメモすると、システムだけでは見えない業務構造が分かります。
4|その仕事をできる人が何人いるかを見る
業務の負担は、所要時間だけでは判断できません。
短時間で終わる仕事でも、特定の管理者やベテラン職員にしかできなければ、休みや退職の影響が大きくなります。
各業務について、次を確認します。
- 手順を説明できる人は何人いるか
- 判断基準が文章になっているか
- 必要な情報へ他の職員もアクセスできるか
- 担当者が休んだとき、誰が代わるか
- 最終確認が本当に管理者でなければならないか
属人化している仕事は、単にマニュアルをつくれば解決するとは限りません。情報の置き場所、権限、相談方法、承認の範囲まで見直す必要があります。
5|頻度・時間・リスクの3つで並べる
書き出した業務は、次の3つで確認します。
| 視点 | 確認すること |
|---|---|
| 頻度 | 毎日、毎週、毎月、随時のどれか |
| 時間 | 1回に何分かかり、何人が関わるか |
| リスク | 間違い、遅れ、確認漏れが何につながるか |
毎日発生し、複数人が関わり、転記ミスの可能性がある業務は、優先して見直す価値があります。
一方、安全や法令に関わる仕事は、頻度が低くても優先度が高くなります。時間削減だけで順位を決めず、利用者への影響や運営上のリスクも含めて考えます。
6|「なくす・まとめる・任せる・つなぐ」で考える
課題が見えたら、すぐに新しいシステムを探す前に、4つの方向から検討します。
なくす
目的が曖昧な集計、誰も見ていない一覧、同じ内容の二重入力をやめられないか。
まとめる
保管場所、入力画面、確認時間、連絡手段を一つにできないか。
任せる
管理者だけが行っている確認を、基準を共有して他の職員へ移せないか。定型作業をAIやシステムへ任せられないか。
つなぐ
記録した情報を、申し送り、報告書、請求、ケースファイルなどへ連携できないか。
「今ある作業を速くする」だけでなく、そもそも作業を残す必要があるかを考えることが大切です。
7|最初の改善は一つの流れに絞る
業務を棚卸しすると、改善したいことが一気に増えます。しかし、すべてを同時に変えると、現場が新しい運用を覚えきれません。
最初は、次のように一つの流れへ絞ります。
- FAXを受信してから、利用者別のケースファイルへ保存するまで
- バイタルを記録してから、月次報告書を作成するまで
- 事業所内で申し送った内容を、支援経過へ残すまで
- 複数の書類を受け取り、対象利用者ごとに整理するまで
変更前に、かかっている時間、転記回数、関わる人数を確認します。変更後も同じ項目を測れば、本当に負担が減ったかを判断できます。
業務棚卸しシートに入れたい項目
表計算ソフトや紙を使う場合は、次の項目があれば始められます。
- 業務名
- 業務の目的
- 担当者
- 発生するタイミングと頻度
- 入力・参照する情報
- 次に情報を渡す相手
- 使用する紙、Excel、システム
- 1回あたりの時間
- 転記、確認、待ち時間
- 担当できる人数
- 間違いや遅れによるリスク
- なくす・まとめる・任せる・つなぐの候補
すべてを正確に埋める必要はありません。分からない項目が見つかること自体が、業務を見直すきっかけになります。
CareSpaceOSは、業務を点ではなく流れでつなぐ
CareSpaceOSでは、記録、情報共有、書類管理、FAX、報告書などを別々の作業として終わらせず、情報を次の業務へつなぐことを重視しています。
トークルームの内容を支援経過へ連携する。バイタルデータをグラフ化し、報告書作成につなげる。複数の書類をAIが解析し、対象利用者のケースファイルへ振り分ける。FAXの受信と送信をデジタル化する。
現場で一度入力・受信した情報を、必要な場所へつなげることで、探す、写す、確認する仕事を減らします。
ただし、機能を入れること自体が目的ではありません。どの業務に負担があり、どこをつなぐと現場が変わるのかを整理したうえで使うことが重要です。
業務をどこから整理すべきか決まっていない場合は、介護経営の45分無料相談でも一緒に現在地を整理できます。

